野良猫の拾い方

単行本¥1,512
監修:NPO法人東京キャットガーディアン
企画・編集・執筆:富田園子
発行者:佐藤龍夫
出版社:大泉書店
発売日: 2018/4/24
シェルターやAMAZONで販売中!

野良猫の拾い方

【書籍紹介文より】
野良猫捕獲のイロハから、必要な医療ケア、赤ちゃん猫の育児法、
馴れない猫の馴らし方、終生幸せに生きるための健康管理まで、
東京都最大の保護猫団体・東京キャットガーディアンの全面協力のもと
その長年積み上げたノウハウを詰め込みました。

たとえば「子猫の湯煎」は、低体温の赤ちゃん猫を
消耗させず温めることができる画期的な方法。
また、たとえば「孫の手を使った猫の懐柔法」は
触ろうとすると引っ掻いてくる、特に臆病なタイプの元野良猫に効く方法です。

そんな百戦錬磨の保護猫団体ならではのノウハウのほか、
保護活動を行うなかで実際にあった印象的なエピソードや、
元野良猫と暮らす人たちのインタビュー記事なども収載。
野良猫とはなにか、元野良猫と暮らすというのはどういうことか、
多角的に考えられるヒントがたくさん載っています。

拾いたい野良猫がいる方、
猫を拾って飼いはじめた方、
保護団体などから元野良猫を迎えようと思っている方、
野良猫におしかけ女房的におしかけられた方。
あなたと猫の幸せな未来のために、ぜひ本書をご活用ください。

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野良猫の拾い方
(野良猫の拾い方 大泉書店出版 終わりに〜人と猫の近未来)
本書では紙面の関係で短い文章を掲載しましたが、出版社さんの許可をいただきましたためフルバージョンを公開いたします。

人と猫の近未来

  「猫の保護団体の目標は?」
って聞かれたら
「とりあえず外に猫がいなくなることです」
と答えます

団体としての活動は10年ほどになります(個人シェルター時代を入れると18年くらい)。ですが、野良猫と呼ばれる猫たちを見かけると「可愛い!」よりも先に、心配でドキドキ。

猫がゆったりできている環境・街は好きです。いいなと思いさえします。でもその光景は、すぐに痛みに取って代わります。

日向ぼっこしているいい顔の猫たち。ゆっくり優雅に路地裏に消えていく猫たち。美味しいご飯をもらえるお家があって、丸々といい体格になっている猫たち。
それらは、外で暮らす猫たちのほんの一部分。ラッキーな一時期のことだと知っています。
運良くご家庭に迎えられたりしなければ、外での動物の最後は悲惨なものになります。治療も緩和ケアも無し。

そんな外の猫たちだから、いろいろな形で関わりを持つ方が出てきます。

人に懐いている野良猫を見かけて、不憫に思いお家に招く。次々保護しなきゃいけない子が出てきて飼いきれなくなってしまう方。

楽しみにご飯をあげ続けて、手術や地域への配慮という概念がないまま、野良猫屋敷状態を招いてしまう外飼いおばあちゃん。

手術の時期を見誤ったり、ためらったりして家庭内繁殖になってしまい、SOSを発した時には多頭飼育だけでなくゴミ屋敷に発展しているファミリー。

手術さえすれば…だけの問題ではありませんが(アニマルホーダーの例など)少なくとも繁殖抑制は、猫にも人にも快適に暮らすために必要な事柄なのです。

「地域猫」という、とてもいい考え方が導入されて相当な歳月が経ち、モデルケースになれるような場所も出来てきている一方で、その呼び名すら知られていない場所も多いと思います。
環境省が主軸となるプランをまとめ、各自治体が動物行政のメインに盛り込んでくれても、まだまだ圧倒的に認知されていないのです。

こうした状況に対して、「餌をやらなければいい」「世話をする人が居なければ減る」という意見は毎回出ます。しかし、野良猫の数を末長く減らしたいのであれば、得策ではないと思います。

「餌をあげながら不妊去勢手術をし、他地域からの新たな流入があったらいち早く気がついてまた手術の計画を立てる」
地域猫という考え方の本来の動きをしてくださる人たちは、そのエリアでのいい管理人になれるのです。

都市開発計画のお話に参加させていただける機会があると、必ず「最初から地域猫の部署を作りましょう。街の機能として必要なんです。防災やゴミの回収などの生活に関わる部分と同じです。いくらもかかりません!」と提案します。

排除の理屈で反対意見を述べる方々が、一つ気がついていない事があります。
「その地区で猫を一掃したとしても、猫好きは一掃できない」と言うこと。

計画的に手術をして管理してくれる人を無くしてしまった場合、認めてあげなかった場合、それでもご飯をあげる優しい方々を止めることは無理です。そして公には世話もしてはいけないことになっていたら、管理人のいないその場所では新たに未手術の猫たちが入ってきた場合に、要件が整えば爆発的な繁殖が起こります(バキュームエフェクトと言う呼び方をします)

健康状態に配慮しつつ、不妊去勢手術を行って過剰繁殖抑制ができれば、一世代限りの街の住人として大切に共に暮らし、なるべく全うさせてあげる。
外にいる猫たちを減らしていくこの活動が徹底されていけば、やがて野良と呼ばれる猫たちは緩やかにいなくなる。
「全部を手術しきれない」と言う意見は笑止です。人から必ずご飯をもらうという事は、手術のための餌付けと保護ができるという事です。官民あげて徹底して実施すればいいと思います。

子猫たちが生まれるシーズンには、団体への保護依頼も急増します。
誰だって、見捨てるのは嫌でしょう。それは、猫をあまり好きでない人もそう。警察や保健所に持ち込むのだって、目の前で死なれたくはないからです。

「誰も望まない殺処分。足りないのは愛情ではなくシステム」
を掲げて、行政や民間からの猫たちの受け入れ・ケア・譲渡事業を行ってきました。
野良猫と呼ばれる猫たちの手術専門「そとねこ病院」も運営しています。
簡単に助ける方法があれば、ほとんどの人がそれを選択すると思います。日本人は基本的に殺生を好まないのです。

動物に関しては理想の国と、メディアで語られ続けるドイツ。
「殺処分0の国」
「ティアハイムがすべて受け入れてくれる」
「国民の意識が高い」
それぞれ事実とは言い難いのですが、決定的に日本と事情が違うのは外で生活している猫たちの数です。大変少ないのです。

外に野良猫がいなかったら。
何かのはずみで、屋内にいる猫が脱走するくらいしか、外で猫を見ることはないのなら。

保護団体はその少ない数を受け入れてあげる事が出来、充分に手間暇かけてケアをし、慎重に選んで次の飼い主さんへ送り出す事ができるでしょう。

同様に、高齢者が入院などのやむない事情で飼育を断念したり、不慮の事故などで飼い主が亡くなった場合にも、団体のシェルターや個人保護施設が満杯とは程遠い状態だったら…。

すべての問題は数にあります。

トルコやモロッコなど、猫好きで知られる国々はどうでしょう。
野良猫が自由気ままに闊歩していて、売り物の絨毯に堂々と寝そべっていたり、可愛らしく寄ってきてご飯をねだったり、観光地で呼び物になっている光景をTVなどでご覧になる方も多いでしょう。
手術はほとんどされていません。そして治療や駆虫もされていません。(ドキュメンタリーではなく日本のエンタメ番組の中で流れるその映像には、病気でやせ細っている猫や、生存競争に負けて亡骸になっている子猫も映りません)
不妊去勢手術なしなのに、猫の問題が日本のように取りざたされないのは、フード事情が日本より格段に悪く、長生きができないからです。過剰繁殖問題が起きにくいのです。
昭和30年代の日本がそうであったように、人の食べているもの、塩分の強い味の濃いもの、動物性蛋白のとても少ないもの。短命に終わる要件が整っているからこそ手術なしでも淘汰されて、ある程度の問題のない数が人の近くで暮らし続けています。

日本は今更キャットフードの質を下げることはできませんし、過剰繁殖になるとわかっていても、猫たちにはなるべく長生きしてほしい・今いる子に健康でいてほしいと、ご飯をあげる方は皆思っているでしょう。もちろん家庭の猫たちにもです。

取材をいただくことの多い東京キャットガーディアンですが、数年前ドイツのドキュメンタリーチームがお越しになった時に、逆にお聞きしてみました。
「ドイツは犬猫を殺さないって聞きますが?」
「ティアハイムが引き受けるんです。安楽死はありますよ」
「施設はいっぱいにならないんですか?」
「日本のようにたくさんいませんから」

〝数が少ない〟
そこに至るまでにはやはり厳しい道のりがあったかと思いますが、今現在の外での生息数が極端に少なければ、フード事情がいい国でも処分数を限りなく0に抑えて人と伴侶動物はいまどきの暮らし方ができるのです。

犬も猫も、人が手を加えて作り込んできた動物です。
人の手なしに生きられないのですから、同様の立場の家畜が外で生活していないように、猫も屋内でのみ暮らしていく世界を目指すのがあるべき姿と思います。

早く、近代国家としての体制を整えたいものです。
そのためには、「地域猫なんか認めねぇ!」とか言ってる頑迷で前時代的な町会長の許可など必要のないシステムで、不妊去勢手術を一般の方がハードル低く行えることが大事です。そしてロサンゼルスのように、飼い主が屋内飼育している伴侶動物にも手術を義務付け、違反者にはちゃんと罰金刑が課せられるようにするべきだと思います。
東京キャットガーディアンでは「早期不妊去勢手術」と言って、子猫のうちに手術を済ませます(成猫はもちろんです)シェルターから譲渡する猫たちは、家庭に迎えていただいてからも、万一逃走してしまった場合にも、繁殖をする可能性はないのです。

「むかし、猫は外にも居たんだよ」

お家にだけいる猫たちを、大切に家族の一員として暮らす。
迷子や、万一飼育困難になった猫も、セーフティーネットとしての保護団体が受け入れられる。
それが当たり前にできる未来を目指して。