猫エイズウイルス感染症・猫白血病ウイルス感染症

猫の感染症の中で特にその名前を耳にすることが多いものが、猫エイズウイルス感染症(FIV)猫白血病ウイルス感染症(FeLV)の2種類かと思われます。この2つの病気は、いずれも『発症すると』かなりの確率で死に至る恐ろしい病気です。これらを予防するワクチンもありますが、完全な予防効果は残念ながら期待できませんので、ウイルス感染から猫を守るためにはまず、外に出さないことが肝要です(FIVは主に咬傷、FeLVは唾液などから感染します)。

これらの病気を調べるには検査が必要です。主に血液を少量採取し、専用の検査キットで検査することにより、感染の有無を調べることが出来ます。2ヶ月以上室内飼育で他の猫との接触のない成猫では1回の検査で判断できますが、注意しなければならないのは、新しく迎え入れた猫や生後6ヶ月齢以下の子猫の場合です。

FeLVに関してはどの年齢でも陽性の検査結果が出れば感染を示唆することになりますが、FIVの場合は少し事情が異なります。FeLVの検査は感染しているウイルスそのもの(抗原)を検出しますが、FIVでは感染したウイルスに対する体の反応(抗体)を調べています。そしてこの抗体は母猫から子猫に受け継がれることがありますので、その譲り受けた抗体が検査結果に陽性という形で反映されてしまうことがあるのです。

そのため、生後6ヶ月齢以下でFIV検査の結果が陽性と出た場合には、1歳齢前後でもう一度確認検査をすることをおすすめします。母猫から抗体を譲り受けただけの場合には、その抗体が消失していきますので再検査で陰性に、その猫自身がウイルスに感染していた場合には再検査でも陽性と結果が出ます。再検査で陽性と出た場合には、その猫がFIVに感染していると考えてよいでしょう。

また、いつ感染したかという時期も検査に影響を及ぼします。FIVでは感染してから約2ヶ月後、FeLVでは感染してから約1ヶ月経たないと、検査結果として反映されてきません。検査の時期によっては、感染しているのに結果が陰性として出てきてしまうこともあるのです。

当シェルターで実施している検査は、推定4ヶ月齢を過ぎた子へのFeLV検査のみです。
上述したように子猫時代の検査では、FIVに関しては偽りの陽性が出てしまう可能性があることや、感染していてもウイルスをただ持っているだけ(キャリアー状態)で症状を示さずに、寿命をまっとうできる子もいます。FeLVに関しては、FIVよりも状況はシビアですが、本人の免疫力や治療などにより、ウイルスが体から排除される可能性もあります。

私たちのような保護団体からの譲渡により猫を飼い始めることも、道で子猫を拾って飼い始めることも、その両者が持つ、病気などのリスクに違いはありません。そのことを熟慮していただけますよう、お願いいたします。

検査の解釈

成猫の場合

FeLV

陽性 陰性

(1ヵ月後再検査)

現時点での感染はない

陰性

陽性

(1ヵ月後再検査)

(感染から4ヵ月後再検査)

陰性

(免疫によりウイルス排除)

陽性

(持続性ウイルス血症)

FIV
陰性…現時点での感染はない
陽性…FIVに感染している
FIVワクチンを接種している可能性がある場合は、検査センターでの検査が必要

生後6ヶ月齢以下の子猫の場合

FeLV
陽性
…感染を示唆(若い猫ほど持続感染になりやすいため)。
念のため、再検査は必要

FIV
陽性
…母猫がFIV陽性の場合もしくは母猫がFIVワクチン接種済みの場合、
母親の持つウイルスに対する抗体を譲り受けていることがあり、それが検査に陽性として反映されることがある。
2ヵ月間隔および6ヶ月齢以降での再検査をする必要性あり*1

陰性
…感染していない。
FIV陽性の母猫から生まれた子猫の場合、念のため母猫と最後に接触してから60日後に再検査


*1簡易検査キットではワクチンによる抗体か感染による抗体かの判別が出来ないため、ワクチン接種済みの場合は、検査センターでの検査が必要